変わることなく、地域から愛され続ける店を目指して
(令和6年2月取材)
1.事業内容
創業90年。地域で愛され続ける割烹料理店
「割烹おせん」は1934年に創業し、今年で90年目を迎えます。店名は初代の女将の名前「せん」に由来し、私は4代目です。私が料理を、妻が女将として接客を担い、二人三脚で店を切り盛りしています。先代までは主に接待などに利用される高級店でしたが、私の代からは地域の方により親しまれ、食事だけでも利用できる店にしたいと、おもてなしの心はそのままに、メニューや価格帯などを変えました。今では接待だけではなく、お食い初めや結納、記念日といったお祝いごとから法事、ご友人との会食など、幅広い世代の方にあらゆるシーンでご利用いただいています。 |
2.強み
趣ある空間でゆったりと食事を
当店ではお座敷やテーブル席、掘り炬燵のお部屋などさまざまな個室を用意しており、落ち着いた空間でお食事を楽しんでいただけます。少人数から80名程度の大人数まで対応でき、お座敷にはテーブル席をしつらえることもできますので、正座が苦手だという方でも安心です。 縁側から望む中庭の景色も、当店の自慢のひとつです。四季折々の花や木々、池を泳ぐ錦鯉など、日本庭園ならではの風情を感じられます。2022年12月からは水曜・木曜限定で、この庭を眺めながら月替わりの料理が味わえる縁側ランチを始めました。ゆったりとした時間が過ごせると、大変好評です。 |
地元食材にこだわった、多彩でリーズナブルな料理
食を通じて地元に貢献し、地元の方たちから愛される店でありたいという想いから、野菜やお茶など地元の食材にこだわっています。お米は静岡県産の「きぬむすめ」というブランド米を使っており、農家から精米したてのものを届けてもらい、昔ながらのガス釜で炊き上げております。また、焼津の鰹節を削って、出汁はもちろん料理の具材にも使っています。
私は店を継ぐまでの約12年間、日本料理のほかフランス料理や寿司などさまざまな店で修行を積み、ふぐ調理師の免許も取得しました。その経験を活かして洋食も取り入れ、大人から小さなお子さんまで、家族連れでも気軽に楽しめるメニューと価格設定にしています。
私は店を継ぐまでの約12年間、日本料理のほかフランス料理や寿司などさまざまな店で修行を積み、ふぐ調理師の免許も取得しました。その経験を活かして洋食も取り入れ、大人から小さなお子さんまで、家族連れでも気軽に楽しめるメニューと価格設定にしています。
3.課題と解決のきっかけ ~メインバンクと静岡県信用保証協会との連携~
コロナ禍により売上が激減。経営の危機に
順調に常連のお客様が増えてきた頃、新型コロナウイルス感染症の拡大により、大打撃を受けました。まん延防止等重点措置による営業時間の短縮で、来店客数は激減し、月に100人はいた宴会客もゼロになりました。テイクアウトなどで対応したもののやはり経営は厳しく、2020年5月にはゼロゼロ融資を受けました。しかし翌年になっても状況は変わらず、再びゼロゼロ融資の申込みをしたところ、メインバンクである静岡銀行の担当者より、信用保証協会へ相談することを勧められたのです。 協会との面談で、銀行の担当者は当店が「地域に欠かせない店」であり、ぜひ支援をお願いしたいと熱心に訴えてくれました。そして地域の方々に美味しいものを食べて幸せになってもらいたい、そのためにもっと使いやすい割烹店にしたいという私の想いに、信用保証協会の方は共感してくれました。
4.静岡県信用保証協会の経営支援内容
経営支援を受け、事業の立て直しを目指す
経営支援を受けられることになり、まず信用保証協会の専門家派遣制度を活用し、飲食業に詳しい専門家によるワンポイント診断を全3回受けました。そこで、当店はメニューが多すぎて選びにくいため、絞る方が良いこと、店の顔となるスター商品を作ること、売上管理を日々時間ごとに行い、その日の天候や客層なども細かく集計することなど、一つひとつ具体的にアドバイスをもらいました。3回の診断を受ける中、新たな課題が生まれてきたことから、継続して課題に対するアドバイスを受けたいと考え、静岡県産業振興財団の専門家派遣制度を活用して、同じ専門家による経営診断を受けることになりました。
5.経営支援のリレー ~静岡県産業振興財団・島田市商工会・静岡県信用保証協会の連携~
専門家派遣制度に加え、補助金を活用して設備を強化
静岡県産業振興財団による全5回の経営診断を受け、改めて専門家による支援の素晴らしさを実感しました。課題の洗い出しや、データ分析に基づいた経営戦略など、とても自分たちだけでは気づけない、考えつくこともできないことを毎回教えてもらったのです。これだけ熱心に教えてくれるのだから、きちんと実行しなければと、女将と力を合わせて真剣に取り組みました。
さらに信用保証協会からの提案で、売上回復に向けて補助金を活用して設備などの強化を図りました。島田市商工会にも協力を得て、小規模経営力補助金にてホームページやチラシ、タペストリーを作り、さらにテーブルやイスを購入しました。また、物価高騰補助金にてエアコンやサーキュレーターなどを購入し、縁側ランチの実現につなげました。集客にはインスタグラムとフェイスブック、Googleビジネスプロフィールの活用を提案され、女将がIT専門家のセミナーに参加。学んだことを活かし、時には従業員たちにも教わりながら、積極的に情報発信を行ってくれています。
さらに信用保証協会からの提案で、売上回復に向けて補助金を活用して設備などの強化を図りました。島田市商工会にも協力を得て、小規模経営力補助金にてホームページやチラシ、タペストリーを作り、さらにテーブルやイスを購入しました。また、物価高騰補助金にてエアコンやサーキュレーターなどを購入し、縁側ランチの実現につなげました。集客にはインスタグラムとフェイスブック、Googleビジネスプロフィールの活用を提案され、女将がIT専門家のセミナーに参加。学んだことを活かし、時には従業員たちにも教わりながら、積極的に情報発信を行ってくれています。
6.伴走支援でのフォロー ~静岡県信用保証協会によるモニタリングとフォローアップ~
寄り添ったサポートが経営改善につながる
信用保証協会の担当者には、とても感謝しています。補助金申請の際には、申請書のたたき台を作成の上、書類作成のポイントを教えてくれたり、女将が受けたIT専門家のセミナーにも一緒に参加し、SNSやGoogleの投稿内容などもこまめにチェックをしては、お客様のコメントへ返信するよう促してくれるなど、常に寄り添ったサポートを続けてくれています。最近では、ホームページがきっかけで観光バスのツアーに利用されたり、口コミでリピーターが増えたりと、客足は徐々に戻ってきています。今後は季節の食材を使ったキャンペーンの打ち出しや、利益率アップに向けたメニュー開発、SNSの充実など、黒字化を目指してさらに励んでいきたいと思います。そしてこれからも変わることなく、地域の皆様から愛され続ける店を目指していきます。
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信用保証協会のサポート (有限会社おせんの場合)
- 2021年4月
当社を訪問し、ヒアリングを実施。信用保証協会の専門家派遣制度の活用を提案 - 2021年6月-7月
信用保証協会の専門家派遣制度を実施(ワンポイント診断3回) - 2021年10月-2022年1月
静岡県産業振興財団の専門家派遣制度を実施(経営改善診断5回) - 2022年2月
信用保証協会の専門家派遣制度を活用し、アクションプランを主軸とした簡易な経営計画を策定 - 2022年5月-7月
島田市商工会と連携し、小規模経営力向上補助金を申請 - 2022年10月-12月
島田市商工会と連携し、物価高高騰補助金を申請 - 2023年8月-11月
信用保証協会の専門家派遣制度を実施(フォローアップ診断3回)
信用保証協会 担当者からの一言
当社を訪問させていただいた際に、職人としての誇りを持ちながら、地域で食べてもらいやすい割烹店にしたいという社長の想いに触れ、当社の力になりたいと強く思いました。 当社の蓄積された強みである地域からの信頼や、趣のある個室や座敷、中庭などを上手く活用出来ればと思い、専門家派遣をはじめ、補助金の申請やITセミナーの同行等のサポートをさせていただきました。 コロナ禍での客数減少により苦しい状況にありましたが、最近では経営陣の表情が明るくなってきたと思います。社長や女将から「ホームページやインスタグラムを見て、予約してくれるお客様が増えてきました。土日祝日は満席の日も多く、忙しくさせてもらっています。」と喜びの声を聴くことができ、自分のことのように嬉しく感じています。 依然としてコロナの影響があるなかで客足が戻ってきているのは、社長と女将が経営改善に真摯に取り組んだ証だと思います。 当社の料理を少しでも多くの人に食べてもらえるように、今後も継続して、共に頑張っていきたいと思います。 |
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